Intermezzo - Cahier

はてなダイアリから参りました(

諏訪哲史 アサッテの人 (講談社文庫)

群像新人文学賞芥川賞W受賞作。
吃音による疎外感から風狂に至り、失踪した叔父の生み出した亜空間「アサッテ」にまつわる私の記述、といった内容。作者はメタフィクションを嫌ってこの作品に取り組んだと後書きで述べているけれど、構造としてはメタフィクションそのもの(だと思う)
叔父夫婦の新婚旅行先がウクライナリトアニア、ラトヴィア、エストニアだったり、叔父の「アサッテ」語録のなかに「ユジノサハリンスク」が出てきたりと、私もアサッテ側の人間だろうかとひやりとする思いでこの書の推薦者O君の顔を思い浮かべた。
アサッテの内容は、奇妙奇天烈なのだけれど、面白い。何度か噴出してしまいました。叔父の行方は知れぬままだし、事は何も展開していないのだけれど、読後感は不思議と爽やかで鮮やかであった。
最後の平面図のくだりは蛇足ではないかと思われましたが、どうでしょうねぇ。

アサッテの人 (講談社文庫)

アサッテの人 (講談社文庫)